新人漫画賞SPARK 24年3月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

準入選1本・佳作1本出る!!!!!
[総評]加藤和恵 先生

今回も驚くほどレベルが高く、内容もバラエティに富んでいて、楽しく選考させてもらえました!とにかく全員絵が上手すぎてビックリしたのですが、特に『推して知るべし』『777』の2作は完成度が高くて、思わず息を呑んでしまいました。今回で各々の方に課題は見えていると思いますので、自作では意識をしつつとにかくたくさん描いてみてください!応援しております! !

[総評]ジャンプSQ.編集部

今回は全体的にレベルが高く、即戦力級の作品が多かった。特に、センスやデザイン、画力などのそれぞれに秀でている点があった。自分の強みを伸ばし、そこにオリジナリティを乗せて次の作品にもトライして欲しい。

月間TOP 準入線 賞金75万円
推して知るべし37P
竹村直也25歳 東京
あらすじ
類を見ないクールボーイのクラスメイト、滝口くん。そんな彼を密かに推している立花さんはいつも遠くで見つめるだけ。ある日、滝口くんの後を付けていたら謎の生物(?)に話しかけている姿を見かけてしまい!?滝口君への推し活がバレた立花さんの運命やいかに!
GOOD POINT
独特な雰囲気やワードセンスがあり、会話のテンポもよくて、楽しく読むことができた。題材選びも秀逸で自身の強みとバッチリとハマった企画になっていた。キャラクターの表情もこだわって描いており、推しに対する絶妙な感情もありありと伝わってきてよかった。
NEXT STEP
自身の世界観を存分に発揮できていた今作だったが、背景などをもっとしっかり丁寧に描くことでさらなるレベルアップが期待できる。読者の読後感まで意識をできるともっと良い作品になる。自分にしか出せない世界観とセンスを爆発させた次回作を読んでみたい!
加藤和恵先生からのコメント

セリフ(ネーム)が面白くてグイグイ読める!ストーリーの切り口のオリジナリティや、日常から非日常へどんどん発展していくワクワク感で楽しく最後まで読まされました。特に、ラスト、マイルドにひねくれてオチるのかなと思いきや、この先を感じさせるオチを持ってくるところが、この作者さんのサービス精神を感じさせてよかったです。絵もこのネタなら十分な画力で味があって漫画も読み易い。アラが全くないわけではないですが、素直に面白かったです。

佳作 賞金30万円
77751P
明歳幸25歳 愛知
あらすじ
遥か極北。星降る時に願いが叶うという十字の丘を目指し旅するカンナとミナ。果てしない旅を続けるふたりはようやく最終関門、「天使の樹海」にたどり着く。カンナとミナのふたりはこの森を抜けることはできるのか?ふたりが過酷な旅をしてまで叶えたい願いは何なのか。そして「ミナ」という名前に隠された謎とは!?
GOOD POINT
ふたりだけの旅というテーマとダークな世界観をうまく表現することができていた。ループものとしての完成度も高くて、驚きの展開を作れていた。また、登場人物ふたりをかわいく描けており全体的に雰囲気のある画面作りで作品の世界観に引き込まれた。
NEXT STEP
ダークで引き込まれる世界観を作れていた反面、設定などが少しわかりにくくなってしまっていた印象。絵で設定を見せることでさらに読者を世界にのめりこませることができる。画力も高いがアクションシーンの動きを丁寧に描くことでもっと良くなるはず。
加藤和恵先生からのコメント

背景込みのロングショットが多いのが、旅の雰囲気をより演出できてとてもいいです。画力も荒さはありますが低くないし表情もいい。「極北の十字」や「母親の真意」など謎は散らばってますが、二人ボッチの女性の壮大なようでいて閉じた美しい世界観が暗く哀しい読後感でとても印象的でした。個人的には、「心が折れるその時まで」というセリフはループ後の記憶がないのならノイズに感じました。彼女らは永久にこの二人だけの楽しい旅をループし続ける物語に感じたので。何にしても独自性の光る力作で素晴らしかったです!

編集部特別賞 賞金15万円
生活45P
蒼井創真23歳 京都
あらすじ
周りが現実に生きる中、夢を捨てきれずいる主人公。路上ライブに来る女子高生の進路の悩みを聞き、彼も現実と夢の狭間で揺れ動く。
GOOD POINT
モラトリアムを描いた作品としてリアリティが非常に高く、絵柄の雰囲気もあいまって読者の感情を動かす力のある作品になっていた。
NEXT STEP
荒さのある線が味を演出していた一方それが読みづらさに繋がってしまっている面もある。丁寧さを心がけるとよりよい作品になる。
加藤和恵先生からのコメント

不安定なところもありますが、雰囲気があって好きな画風です。いくつか印象的なセリフもあって「地に足を付けて夢を追い続けていく」というストーリーのやりたいことも伝わりましたが、どうにも淡々とした演出のせいか、飄々とした画風のせいか、あまり切実に伝わってこなかったのが勿体なかったです。この淡々さや飄々さは持ち味なので活かしてほしいのですが、ずっと淡々と描かずにしっかり見せ場を設定して、そこにストーリーのピークが演出できればもっと物語が胸に迫ったはず…?

編集部特別賞 賞金15万円
甘味屋娘のまやかし帳32P
零草よつき19歳 愛知
あらすじ
少女連続誘拐事件の調査のため、甘味屋の看板娘として潜入調査をする忍者のもち子。潜入先にきたイケメン役人に恋に落ちるが…?
GOOD POINT
非常に画力が高く、どのキャラもかっこよく、かわいく描くことができていた。アクションシーンを丁寧に描いているのもよかった。
NEXT STEP
話作りの基本を押さえられていたものの、読み味としては少しだけ物足りない印象に。意外性のある展開を意識できるといい作品に!
加藤和恵先生からのコメント

即戦力級のキャッチーでカワイイ絵柄で、漫画もとても読み易く描けているのはホント素晴らしいですが、ストーリーは荒さが目立ちます。…どうにももち子ちゃんがどうにもただただドジッコ少女マンガヒロイン過ぎてこの忍者の組織大丈夫か…?と心配になってしまう。もう少し、忍者としての活躍シーンはギャップを意識してカッコよく描くとか(衣装をかっこよくするとか?)事件の真相にせめて同僚は近づけているとか。何にしても、何を目的にしたどのような存在に傭われた忍者なのかは知りたかったですね。

最終候補 賞金10万円
黒龍戦記55P
久我透香21歳 愛知
あらすじ
竜に抗うために生み出された技術、魔法。魔法を使いこなし、人々を守る賢者に憧れる主人公。しかし彼は魔法を使うことができず…。
GOOD POINT
企画としてやりたいことが明確でストレートに描けていた。画力も高い。特に、竜の鱗を丁寧に一枚ずつ描いていたのは驚きだった。
NEXT STEP
とても素直な作品であった反面、展開としては、少々物足りなさもあった。キャラクターも含めて、自分らしさを全面に出してみよう。
加藤和恵先生からのコメント

画力は決して低くなく、むしろ上手いと思うのですが…カメラアングルやコマ割りの拙いところが随所にあって、特にアクションで何が起こっているのか把握するのに苦労しました。ストーリーは、世界観の描写というか街の人々の描写が足りていないと思います。どのくらいの人々が魔法が使えて、使えない人はどのくらいか。少なくとも、龍の脅威に対して戦いたいのか、守られたいのかしっかり描写しないと、後半のキャラのドラマにはどうしてもノッていけません。

最終候補まであと一歩 賞金1万円
ハジメ55P
吉岡連25歳 千葉
GOOD POINT
弓道ものとしての完成度が高かった。キャラの心情の描写も丁寧で、感情移入をすることができた。演出も拘りを感じることができた。弓道に関する専門用語も、解説がわかりやすかった。
NEXT STEP
部活ものの展開としては、少々重たくなってしまった印象。好感度の高い絵柄を活かすなら、爽やかな話があっているかも。キャラの好感度をもっと意識すると読みやすく、いい読後感の部活もののマンガになる。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
お前には絶対負けない45P
塩野谷ごり22歳 東京
GOOD POINT
今までに読んだことのない読み味の作品で、独創性が非常に高かった。会話劇がシュールで面白く、楽しく読めた。キャラデザもその人物の性格に合ったものになっていて読みやすかった。
NEXT STEP
オリジナリティがあふれる作品になっていた一方で、キャラクターの性格が尖りすぎて、好感度が少し低くなってしまっていた印象。テストで1位を取るために頑張るという動機は共感ができるので性格も意識を!
最終候補まであと一歩 賞金1万円
浪漫菩薩42P
川上貫太郎28歳 大阪
GOOD POINT
浪漫を求める菩薩という、コンセプトが面白かった。浪漫菩薩というタイトルもワードとして強いのも良い。普通の菩薩が徐々に浪漫に傾倒していく様子も読者を笑わせるネタになっていた。
NEXT STEP
タイトル含め企画としてのアイデアは秀逸だったが、ネタの数がもっとあると、さらに笑いどころが増えて楽しいマンガになると思う。センスは確かなものがあるので、あとはそのセンスをどう活かすかが鍵になる。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
思い出とサイダー32P
福田あや19歳 京都
GOOD POINT
思春期特有の少女の感情をリアルに描くことができていたと思う。バッドエンドではあるもののそれをただ暗い雰囲気にせず、美しい海やサイダーの情景を描き、独創性のある作品だった。
NEXT STEP
美しい情景やリアルな心理描写があったが基本的には不幸な境遇の人物しかでてこないため救いがない話になっていた。繊細な描写を活かしつつ次回作は楽しい雰囲気の作品を描くことができると作風の幅が広がる。