新人漫画賞SPARK 22年10月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

内藤先生絶賛の快作揃う!! 審査員特別賞3本、編集部特別賞2本出る! !
[総評]内藤先生

審査で新人の皆さんの苦闘ぶりに接する度に、そうそう、漫画って本当に難しいよねえと気持ちがシンクロします。どう描いていいか皆目分からない、足りていない所にマジに気付けないという五里霧中感は、本当に皆さんを不安にさせるのではないでしょうか。でも、そんな中、皆さんは何とかこうして作品を最後まで描き切り、人に見せられるものにしました。実はこれが一番大事でもう既に軽く偉業なのです。描けば分かる事が大量にあるし、描けば読めるので他の人のフィードバックを貰えます。作品を現実世界に生み出す。それはこの上なくガツンとしたリアルです。描いた者にしか踏みしめられないリアルを足場に、更に先へ進んでいってください…! !

[総評]ジャンプSQ.編集部

今回はデビューに至る作品はなかったものの、今後の成長に期待できる才能の原石が集まった。その才能をより発揮するために、投稿者には「読者視点を意識する」ことを改めて考えてほしい。自分の考える面白さが今の表現方法でどのくらい伝わっているかを常 に客観的に考え、また、そのために編集者を使っていただきたい。

月間TOP 審査員特別賞 賞金20万円
果人外伝梨姫 34P
天ノヒロフミ 22歳 東京
あらすじ
巨大な梨から生まれた梨姫は桃太郎以来の「果人」として世間の注目を集めていた。それから数年後、成長した梨姫の前に喋る猫が現れ、彼女を主人公とした物語が動き出すことを告げる。運命から逃れようとする梨姫であったが、巨大怪獣や異世界への招待などさまざまな物語の刺客が梨姫を主人公にするべく襲い掛かる。
GOOD POINT
数奇な運命に主人公が巻き込まれいく展開を独特なノリでユーモラスに描けていた。作者の持つエネルギーで、理屈が分からなくても読者を引き付ける強いパワーのある作品だった。演出や構図にも気を使っていて、作者の描きたい画が存分に発揮されている。
NEXT STEP
作家性を保ったまま読者の視点を意識することができれば更に良い。それぞれの描写が読者にどう受け取られるのかをよく考えてみてほしい。特にラストの展開で自殺という選択を主人公が取ってしまうと、それまでの落差について行けない読者は多いはず。
内藤先生からのコメント

読めねえな…! !展開が…! !何だこの漫画…www! !と思ってページをめくってましたが「3つの運命が1人の主人公を奪い合っている! ! ! !」の強烈極まりないパンチラインに完全にやられました。超面白い。長く生きてますがここまで初めてのものを見せられた事に感謝しています。最後が寂しいのでそれまでガハハと読んでいた読者がどう受け止めていいかスーンとなってしまう問題がありますが、この時点が一番世間が盛り上がって主人公感がMAXになるという強い描写があれば、テーマで納得させられ更にまとまったかも。この描き方をどこまで続けられるのか分かりませんが、丸まる事なく暴れていってください。期待しております。あと何気に絵が上手い。民家の屋根越しの巨大物など、空間が描けています。

審査員特別賞 賞金20万円
ハローエラーはまだ続く31P
花川 旭 26歳 北海道
あらすじ
死者と対話ができる能力を使い学内で占いの商売をするエスパー少女・神崎聖蘭とマネージャーの梵。しかし能力がペテンであることが依頼に来た平野にバレてしまい…?
GOOD POINT
聖蘭をただのペテン師にしていなかったり、梵にも面倒見のいい先輩の一面を用意していたりと、キャラクターを多面的に描くことで、その魅力を十分に表現していた。
NEXT STEP
読み手を選ぶ絵柄が読みにくさに繋がってしまっているので、より多くの読者に受け入れらるような研究をしてみてほしい。コマ割りの単調さも読みにくさの原因なのでメリハリをつけて。
内藤先生からのコメント

エゾバフンウニ味がロングセラーなのはともかく。明るくて図太いキャラ描写が楽しくもあり奥行きを感じさせる部分でもあるのがとても良いです。反面ちょっと引っかかったのが平野君周りの描写です。彼が本当にセーラちゃんの能力を信じていたら「遊びでしょォ」とは絶対に言わせてはならないし、お父さんの死に対して自殺かどうかの見解もちょっとブレて伝わるので、もっと描写の整理が必要かと。ただ、こういう色々思い付いてしまう所は長所であり作品の魅力にもなっているので、今後も縮こまる事なく伸び伸びブチ込んで行って下さい。

審査員特別賞 賞金20万円
走馬灯で自画自賛 50P
四ツ葉心白 20歳 神奈川
あらすじ
充実した青春を送っていた本田だったが、部活の途中で記憶が飛び、次に目覚めると見知らぬ病院にいた。目覚めたのは本田ではなく、記憶を共有したクローンであった。
GOOD POINT
絵柄の好感度が高く、オリジナルとクローンの対話の場面では特に演出力の高さが光っていた。独自の雰囲気を作りながら読者を引き込むだけの華のある画面が作れていた。
NEXT STEP
クローンとその研究をする施設というSF的な世界観の描き方が杜撰で、リアリティのないキャラクターたちの言動が目立ってしまっていた。設定に振り回されないような題材を選ぼう。
内藤先生からのコメント

ザクザクとした線で伸びやかに描かれるキャラクターが、とても心地よく魅力的です。クローンが記憶を引き継いだまま目覚めるくだりのサスペンスに一気に引き込まれました。ただ、この生き死にや生命倫理に関するテーマはとても難しく、主人公の心情やクローンの心情、実験施設の描写などを更に更に更に徹底的に突き詰めないとなかなか読者の納得のいくものにはなりません。地力はしっかりしていると思うので、もう少しライトな内容のものを丁寧に掘り下げる作品に挑戦してみるのも良いかもしれません。

編集部特別賞 賞金15万円
いのちの火 55P
花持ことは 23歳 東京
あらすじ
人の心が「火」のように見えるという碓氷は、スクールカウンセラーの桐生にその治療を依頼する。桐生は碓氷の持つ特殊能力を使い心に闇を抱える生徒を見つけ、その治療に乗り出す。
GOOD POINT
丁寧に仕上げられた原稿と優しい絵柄で作品全体の雰囲気を作れていた。キャラクターのこともよく考えられていて、積み重ねられた描写で、しっかりと展開を作れていたことも好印象。
NEXT STEP
碓氷が抱えている問題やキャラクター設定と女の子の問題を解決するパートが並行して描かれているので、ひとつの読切としてはまとめりに欠ける印象。引き算しながら作品を組み立てることを意識して。
内藤先生からのコメント

沢山作品の事を考えて丁寧に仕上げているのがとても伝わって来ます。沢山考えキャラクターの心情や過去、設定など様々な側面を思い描くのは作品を深めるのに大切な作業なのですが、少々思いついたものを全て入れ込んでしまっている様に見受けられます。実はそこから色々削って一番言いたい事がシンプルに伝わるよう整理する作業が必要なのです。今回は女の子のいじめ問題と二重人格問題が半分入れ子の数珠繋ぎ構造にあります。これはちょっとどのストーリーラインに集中していいか読者が戸惑うので、女の子問題は炎の発見のみの手伝いであとは先生に任せ、比重を二重人格問題にフォーカス出来れば良かったかと。

編集部特別賞 賞金15万円
山水顕華 53P
唯島レン 20歳 兵庫
あらすじ
唐の時代、皇宮の記録科に所属する荊浩は筆で文字を書くことが下手でいつも上司に叱られていた。しかし荊浩には水墨画の才能があり、庭の梅を描いた絵を路上で売りに出すことにする。
GOOD POINT
実在の山水画家という渋い題材を選んだところにオリジナリティがあった。また、歴史的背景を含めて描こうとしているところに努力が認めらる。ストーリーはシンプルだがまとまっていた。
NEXT STEP
渋い題材を選んだところまでは良かったが、水墨画の面白さや荊浩の技術的なすごさまでは描き切れていなかったのでその部分にアイデアと演出力が必要。冒頭と最後の現代の描写はあまり利いていない。
内藤先生からのコメント

荊浩という方は実在する山水画家なのですね。詳しい史実は存じ上げないのですが、当時の中国では絵を描く事はそんなに重用されなかったのでしょうか。悪役の存在があまりに荊浩を否定する為だけに作られていて、何か個人的な恨みでも無いと成立しないレベルに思えました。自分の描いたものが認められてゆく喜び(特にサイレントでその過程が描かれている部分は出色です)は凄く伝わるので、無理に悪い奴を当てはめるより、絵に対する逆風の描写を当時の社会状況や、厳格な親からの偏見などで表現出来たら歴史的知識も上乗せ出来て良かったと思います。あと皇太子は身分がバレてからも荊浩に話しかける時は最初に会った時のスタンスにして欲しかったです。表裏がある人に見えると勿体ないです。

最終候補 賞金10万円
無題 36P
春山芳介 17歳 宮崎
あらすじ
小学4年生のレンは転校生のカナちゃんに何度も告白をされるが、それを鬱陶しく思い、同級生と遊ぶ方が大切に思っていた。
GOOD POINT
恋愛に興味が出る前の男子小学生の心情を異様なリアリティで描けていた。シーンごとに合った表情の描き方にも拘りを感じる。
NEXT STEP
絵柄や画力は練習が必須。展開上の盛り上がりに欠けるので、読者を引き付けたり、驚かせたりできるような仕掛けを考えてほしい。
内藤先生からのコメント

僕を含め多くの人が漫画の絵を見て自分の絵を作り上げているのに対して、実際の人物を見て絵柄を組み立てている所が個人的にとても良いと思いました。まだまだ表現しきれていない所もありますが、その拙さがレンくんのどうしていいか分からない心情と上手くマッチしていて、不思議な魅力の作品になっていると思います。この歳で一本最後まで描いたのは誰でも出来る事ではないので、そこはしっかり自信を持ってまた挑戦して下さい。

最終候補まであと一歩 賞金1万円
影 シャドー 34P
柳ノ樹  33歳 東京
GOOD POINT
独特の絵柄とデザインでキャラクターを活き活きと描けていた。シンプルな展開だが、最後にオチも用意してあり、ホラーのような構造を作ろうとした狙いは上手くはまっていた。
NEXT STEP
独自の絵柄は読みにくさにも繋がっているので、より多くの読者に届くように工夫が必要。世界観やキャラの個性を描き切れずに終わっている印象もあるので構成も見直してほしい。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
【ショート部門】堕天使 16P
腹田ゐゑ 19歳 神奈川
GOOD POINT
ショートに見合う内容に物語をまとめ、丁寧に構成できていた。絵柄も綺麗でコマ割りや演出の意図も明確に分かり易くできていた。キャラクターのビジュアルにも気を使えている。
NEXT STEP
16Pで描けることにはどうしても限界があるので次はもっとページを使ってキャラを描いてみてほしい。今回の話は信頼から裏切りの流れを丁寧に描けばもっと面白くなったはず。