新人漫画賞SPARK 25年7月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

より一層の躍進に期待!
審査員特別賞1本! 編集部特別賞1本出る!
[総評]藍本 松 先生

5作品中3作品、ラストが弱いと感じ、これのために「面白い」と言いきれない作品もあり、「惜しいな〜!」という気持ちです。冒頭は丁寧に描けているのに、ラストまで気が配れてないのは、ページが足りなかったか、直しすぎてわけがわからなくなっているか、何を描いたらいいかわからないかだと思うのですが…。とりあえず、ラストシーンには“変化”を描いて欲しいです。この漫画を通して、主人公たちの物語がどう変わったのか、ハッキリした“結果”を見せて欲しい。そしてさらに上を目指すなら、“未来”も追加してくれると嬉しいです。主人公の活躍で街を救ったのなら、平和になった街と、民の笑顔が“結果”です。主人公のその後の行動が、“未来”です。その街を去り、次の街へ向かうのか?留まり、守り続けるのか?をある程度知りたい。そして、これを、デカいコマで描いて欲しいのです。最後のコマが小さいと、前述をすべて満たしていても、物足りなく感じてしまいます。ラストシーンで受けた印象は、『面白かったかどうか』に大きく影響します。ネームの段階で、大きく作業リソースを割いて損はないところです。次回作、ぜひ意識してみて欲しいです。

[総評]ジャンプSQ.編集部

今回は個性ある作品が多く集まった。しかしどの作品も、導入で読者を惹きつける力や、必要な情報をうまく読者に伝える力が不足している印象であった。設定や画力に強みがあっても、読みづらいとそれだけで一気に読者からの評価は下がってしまう。個性とわかりやすさの両立を意識して、次回作に取り組んでみて欲しい。

月間TOP 審査員特別賞 賞金20万円
Believe in yourself45P
クマリョウタロウ 27歳 福岡
あらすじ
信仰心により神の加護の力を手にして悪魔と戦うシスターたち。そこでトップ級の戦績を残すイザベルは、過去に両親を亡くしたことで、全く神を信じていなかった。信じられるのは自分だけ。そして、自分を信じるために必要なのは筋トレ!そんな一匹狼のイザベルの元に、突如強大な力を持った上級悪魔が姿を現し―。
GOOD POINT
「信じられるのは自分だけ」「筋トレをしている」などの要素を活かし、読者の印象に残る素直なキャラクターを作り上げていた。また、メインの戦闘シーンでの決めゴマやキャラクターの表情がよく描けており、バトル漫画としての爽快感を演出できていた。
NEXT STEP
痛快なストーリーとキャラが魅力的だが、武器や敵のデザインは今一つな点が目立った。また、肝心の筋トレがストーリーに特に関わってこないのも残念。構図やデッサンなど画力については、今後に期待したい。まずは人に読まれる意識をより強く持とう。
藍本 松 先生からのコメント

面白かったです!徹頭徹尾、イザベラの無双にページを割いているのが読んでいてとても気持ちよかったです。画力はまだこれからという感じですが、コマに適した絵を描けていて、読みやすさは充分。バトルシーンを描くのが好きなのも伝わるので、伸びると思います。世界観や設定もいい。キャッチーだし人気が出そう。ただ、タイトルは、もっといいものがあると思う。内容に則してはいるのですが、私は「思っていたのと違った」と感じました。私は審査員なのでこの漫画を読みましたが、読者はそもそもタイトルの気にならない漫画に一瞥もくれないので、損失に繋がると思います。もったいないよ!

編集部特別賞 賞金15万円
ヨーカイゴ49P
杉本大希 22歳 島根
あらすじ
生まれながら霊力の強い青年・ユウトは、妖怪用介護施設の「妖介園」で働き始める。介護の中で戸惑いながら妖怪たちと絆を深めていくユウトの前にある者が現れて…!?
GOOD POINT
妖怪と介護という新鮮で面白い組み合わせの中で、キャラたちのやり取りを明るく楽しく描けていた。また、主人公の気持ちの変化やコマ割りが丁寧で、読みやすい漫画だった。
NEXT STEP
読みやすさはあったものの画力は今後に期待。まずは丁寧に線を描いてみよう。また、前半でのコメディと後半のバトルは関連が薄く、唐突に感じられた。1つのテーマを描き切るのも大事。
藍本 松 先生からのコメント

タイトル、ダブルミーニングですね。うまい!“パッと見の画力”は低いのですが、“コマごとに適切な絵を描く力”が高いので、読みづらさを感じないのが凄い。構成力も高く、ページ数に対する展開の数も適切で、ちゃんとまとまっています。ただ、色んなことを器用にこなしている反面、突出した点がないとも言える。ファンを獲得する段階に進むには、“突き抜けた何か”が必要なので、ご自身の内なる情熱を探ってみて欲しいです。

最終候補 賞金10万円
oracion55P
黄 雨 27歳 東京
あらすじ
「波旬」という怪物から街を守る教会で下働きをする少年・ソラ。戦力に加わることを望むソラは浄化の力を持った聖女の見習い・ナギと出会うが、ナギには悩みがあり…?
GOOD POINT
カメラワークを活かして迫力のあるシーンを演出出来ていた。特徴のあるキャラクターデザインも印象的。戦闘での街への被害というリアリティを描いているのも良かった。
NEXT STEP
絵と会話で話を進められた反面、説明主体のセリフが多く、主人公の動機が見えづらかった。また、設定が複雑でドラマが弱く感じた。魅力あるキャラクターと、シンプルな話を心がけよう。
藍本 松 先生からのコメント

まず、ト書きがひとつもないことに驚きました。“派旬”が何なのか、見ていればわかる。絵やキャラ同士のやりとりだけで、世界観や設定を説明できているのは新人のレベルを超えています。それぞれ価値観の異なるキャラクターを、3人登場させられているのも凄い。レベルの高いことをやっていると思う反面、キャラクターの感情が伝わりづらいのが惜しい。前述の高い技術を伝え切れていないと感じる。表情やリアクションの幅を広げたり、盛り上げ演出の工夫が必要かなと思います。ラストの余韻も弱い。あと、どのフキダシが誰のセリフかわからない点も多かった。描き文字が絵に埋もれている。そもそもタイトルの「oracion」もわかりづらい。“わかる人”だけでなく、より多くの人に伝わるように工夫してみて欲しいです。

最終候補 賞金10万円
鉄血のケン33P
江戸画ー 25歳 岐阜
あらすじ
鋼の性質と超人的な力を持つ「鋼人」。その生き残りであるケンは、敵の組織から追われる最中に奴隷のカリナと出逢う。己とカリナの自由のためケンは力を発揮し戦う!
GOOD POINT
迫力あるバトルシーンを楽しんで描いているのが伝わった。また、元気がよく自由な主人公が軸のストーリーは勧善懲悪が明確であり、気持ちよく綺麗にまとまっていた。
NEXT STEP
バトルは迫力があるものの、物語の展開は会話が中心で薄く感じてしまう。鋼人が社会に与える影響のようなリアリティも物足りない。読者に納得感のある展開や設定を一歩先まで考えよう。
藍本 松 先生からのコメント

キャラクターの生き様と、ケンとカリナが出会ったことで起こる変化をちゃんと描けている点が非常にいいです。一方で、鋼人の設定の面白みが“バネ一強”なので、過去彼らがどのようにして活躍・あるいは消費されたのか、バリエーションをもっと見たかった。ページ数が短いのはいいことなのですが、キャラの魅力を伝えるための増ページなら、増やしていいと思います。ラストも、無理やり奇数ページ内にねじ込んだ感が否めず、コマが小さいし、セリフが説明的になってしまっている。ページを贅沢に使うべきところを精査して、演出面を磨いていって欲しいです。

最終候補 賞金10万円
密林の約束32P
灯 立夏 32歳 秋田
あらすじ
自我を持ち、互いに会話する木々が息づく森にて芽吹いたテトとマリナ。同日に誕生した2人には、日当たりの差があった。大きく育つマリナの陰でテトの成長は止まり…!?
GOOD POINT
メインの女の子2人を、可愛らしく描けていた。また、木々の成長という設定を活かして、2人のキャラクターの関係性や主人公が抱える葛藤を、うまく描写できていた。
NEXT STEP
キャラの表情がよく描けている一方で、状況が伝わりにくいコマが複数あった。引きの絵を増やし、人物の位置関係を伝えてほしい。また、説明が不足している初出の情報にも注意しよう。
藍本 松 先生からのコメント

2人のキャラクターの関係性に焦点を当て、濃い物語にしているのは非常にいい、いいのですが、ラストが物足りなかった。その後のテトがどう生きたのか、よくわかりませんでした(生き方の変わったマリナと決別したのか、それでもそばに居続けたのか?)全体的に、演出面が惜しい。キャラの絵は描けているのですが、“状況”を描ききれておらず、何が起こっているのか、何をしているのかがわかりづらい。状況説明をト書きに頼っている節があるので、“伝わる絵”を目指して。また、どのセリフを誰が発しているのかわからないコマも多数ある。すべてのフキダシにシッポをつけろとは言わないのですが、せめてわかるようにして欲しい。

最終候補まであと一歩 賞金1万円
変なやつ46P
半水 27歳 東京
GOOD POINT
読者の目を惹きつける独特の絵が印象的だった。また、後半には予想外の演出による驚きがあり、読者の期待を越えようという高い意識を感じた。
NEXT STEP
特殊な世界観への説明がないことや、主人公にとって都合の良すぎる展開に違和感があった。予想を裏切った上で、納得感のある話作りを。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
クレプスクルム40P
いぬ山よーにぃ 36歳 群馬
GOOD POINT
キャラクターのデザインやセリフ、力の設定にインパクトがあった。ストーリーは起承転結がハッキリしており、キレイにまとまっていた。
NEXT STEP
絵柄は迫力があるものの、古臭さが否めない。また、強烈なキャラが読者から遠く感じられた。次は読者が共感できるキャラを作ってほしい。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
47P
吉岡佑麻 23歳 熊本
GOOD POINT
剣道という題材の魅力を伝えたいという気概を感じた。また、まだ幼い主人公の健気で切ない努力が、着実な展開とセリフで表現されていた。
NEXT STEP
まずは最後のページまで、人物や背景を丁寧に描き切ることを意識して欲しい。また、読者が興味を持てるキャラを意識して作ってみよう。