新人漫画賞SPARK 26年5月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

一層の修練求む…!
審査員特別賞1本 編集部特別賞1本出る!
[総評]葦原大介 先生

今回も楽しく審査させて頂きました。毎度のことながら厳しめの講評を書いていますが、それぞれの作家さんに良いところや光るものがありました。次回作以降でのさらなるパワーアップを期待しています。今回の審査に限らず、新人さんの作品を読むと、『豚肉なしでトンカツ作ろうとしてるな』と感じることがあります。物語を展開するために必要な材料が足りていないのを、ノリや雰囲気で強引にカバーしてる、みたいな感じです。一見商品として成立してるように見えても、お客さんの満足度は低くなってしまうことが多いので、自分が作りたい物語には、最低限どんな材料が必要なのか、ネームの時点でチェックして修正しましょう。また、逆のパターンで、余分な設定・必要ないキャラが削れていない、という場合もあります。こちらは、『トンカツの上にホイップクリームがドカっと乗ってる』みたいな感覚です。1ページ目からアドリブでネームを描く人の場合、毎回手癖でいつの間にかホイップクリーム(自分の好物)を盛っちゃう、みたいな傾向があるんじゃないかと推測します。今回作りたい料理に自分の好物が合うのかどうか、それをお客さんが食べたいと思うかどうか、ネームの時点でしっかり検討して修正しましょう。一度描きあげたネームを直すのがめんどくさいという気持ちは、とても、ものすごくわかるんですが、原稿に入る前にしっかり直しておいたほうが、長い目で見ると時間的に得をする、ということが多いです。『基本的にネームは2回描く』くらいの気持ちで、直しの時間も計算に入れてスケジュールを組みましょう。ご応募ありがとうございました。

[総評]ジャンプSQ.編集部

今回の新人賞は作家自身の描きたいものに対する思いや勢いが詰まった作品が多く集まった。描きたいものがあることは素晴らしいが、その一方で人物の言動や話の展開が作者都合に見えてしまう様子が散見されたのも事実だ。読んでいる人が自然と話についていけるようなキャラクター描写やストーリー構成を意識してほしい。

月間TOP 審査員特別賞 賞金20万円
コドクニコドク55P
森林 木一郎 27歳 長野
あらすじ
ナマコビトのズィナミは捕まった家族を取り返そうと奴隷商会に潜入を試みるが、用心棒の侍に見つかり牢屋に入れられてしまう。同じ牢屋に捕まっていたナマコビトたちと協力して奴隷商会から脱走しようとするズィナミだったが、そこに突然、更なる強者を求めて旅をする「蟲毒男」が現れ、用心棒に勝負を持ち掛け…!?
GOOD POINT
作品全体を通して、非常に丁寧な作画がなされていた。キャラはもちろん、背景や小物に対しても、細かな描き込みがされており好印象。見開きの構図は工夫が凝らされていて迫力満点だった。主人公の圧倒的な強さを、話を通して描けていた点も良かった。
NEXT STEP
強烈なキャラと画面構成により大きなインパクトを与えることができた作品だが、そのインパクトを演出するために、前提となる読者の期待を裏切ってしまっていた。読者の予想を裏切る前に、まずは読者の期待に応え、好感を持たれるような主人公を描こう。
葦原大介 先生からのコメント

主人公の蟲毒男が、壺をかぶった無口な男→明るくて社交的な男→心に闇を持った男、というようにどんどんキャラクターが変わっていって、それがどれもあまりうれしくない裏切られ方だと感じました。また、「弱いままでいるな、強くなれ」という作品のテーマに対して、『初めから強すぎて疎外されていた』という蟲毒男の設定が、あまり噛み合っていないように思います。全体的に絵が丁寧で読みやすく、巨大な物の大きさがよくわかる画面構成や、敵役の『侍』が強そうに見える絵力がよかったです。

編集部特別賞 賞金15万円
人柱ビーバック!!31P
キニハエキ 31歳 東京
あらすじ
水害に悩まされるとある村で、人柱として川へと投げ込まれた少女・いく。なんとか生き延びようと川でもがいたいくを助けたのは水神の津結だった。2人は仲を深めるが…!?
GOOD POINT
人柱という背景を持っていながら、明るい性格のいくは読んでいて好印象だった。安直な復讐譚にならず、津結と村を救うハッピーエンドの展開を作れていた点も良かった。
NEXT STEP

話がセリフ主体で進むためやや読みにくさが目立った作品だった。村人がいくを軽い動機で人柱にしたのも気になってしまうポイント。読者の気持ちが乗りやすい画面やキャラを意識しよう。

葦原大介 先生からのコメント

話キャラの掛け合いと表情が描ける分、そこだけに頼って話を進めようとしている印象です。主人公の『いく』が、察しが良すぎて、作者さんの「早く本題に入りたい」という焦りが感じられました。実質10ページ目くらいで話は終わっており、あとは同じことの繰り返しになってしまっています。段階的に新しい情報を出せるように、物語上の出来事や障害、謎などを用意して、主人公たちが会話以外にやれることを増やしましょう。ほんわかしたキャラとハッピーな終わりかたは、ほほえましくてよかったです。

最終候補 賞金10万円
Dr.DRAGON37P
ツツミ幽霊作家 20歳 東京
あらすじ
公園で発明品を披露して皆から「博士」と呼ばれている少女。己の頭脳で世界を変えると豪語する博士は、それを否定するイハラくんに、スポーツ勝負でボロ負けして…!?
GOOD POINT
温かみとかわいげがある絵柄と、活発な主人公が上手く噛み合い、楽しい作品が出来上がっていた。イハラくんとその家族を助けてしまう展開は見ていて気持ちが良かった。
NEXT STEP
博士の背景や目的が曖昧で気持ちが追いつきにくい。また、相棒のドラゴンは、もっと活躍できたはずだ。勢いだけで話を進めずに、登場させた要素やキャラの動きに納得感を持たせよう。
葦原大介 先生からのコメント

暴力団を、暴力でボコボコにする主人公、というお話で、ボコボコにする理由もほぼ「思いつき」のレベルなので、主人公も相当な危険人物だと感じてしまいました。主人公の発明品がほぼ暴力としてしか活躍していないのもそれに拍車をかけています。犯罪の証拠を見つけるため、発明品を使って悪役の組織に潜入、みたいな発想が先で、暴力は最後の自衛手段にしたほうがいいように思いました。その潜入捜査にイハラくんも一緒に連れて行けば、自然と仲良くなれたんじゃないでしょうか。

最終候補 賞金10万円
やすらか支援係46P
蒼庭佳征 31歳 北海道
あらすじ
天国で保健師として働く青年・星乃。彼は自らの死を受け入れられずに、呪縛霊になってしまう、死人の心を支えていた。ある日星乃は恋の未練を抱えた少年と出会いー
GOOD POINT
セリフや、ストーリーの内容が整理されており、全体を通して読みやすい作品。また、陸崎くんの心臓を移植する演出は、典型的ながらも、感動を作ることができていた。
NEXT STEP
星乃のキャラが淡泊なため何もできていないようにも見えてしまうのでキャラの魅力で読者を掴んでほしい。呪縛霊や市役所の設定は、話の展開や演出に対して、もう一歩活かせると良い。
葦原大介 先生からのコメント

役所という舞台設定のせいなのか、主人公は基本『見守る』『寄り添う』というスタンスになっており、最後まで読んだ結果、「冷静に考えると主人公が何かを解決したわけじゃないよね?」と思ってしまいました。死者には、一度だけ現世の物にほんの少し干渉できる『虫の知らせ権』がある、とか、もうちょっと何か主人公たちが物語に介入する余地が欲しかったように思います。読みやすく、誤読する要素も少なく、ラストシーンで主人公にひと捻りあったのはよかったです。

最終候補 賞金10万円
石と番犬55P
朔田アオ 26歳 大阪
あらすじ
ある国の第一王子であるボルノは、願いを叶える石を求めて洞窟にやってきた。しかし、洞窟には石を護る番犬・ガルムがいた!2人は次第に打ち解け悩みを語り始めー
GOOD POINT
ボルノが健気でかわいく、応援したくなるキャラになっていた。話の展開が読者の期待に応える形になっていた点も好印象。要所要所で構図に工夫が見られたのも良かった。
NEXT STEP
期待に応える展開を作れている一方で、ストーリーに無関係な要素が散見されたことが残念。また、コマやセリフの繋がりに違和感があった。読者が読みやすい話と画面の構成を考えよう。
葦原大介 先生からのコメント

石をめぐる後半のやり取りがわかりにくいと思いました。ガルム(または石)をかばってボルノが刺される→ガルムが、自分が消えることを承知で石を使ってボルノを助ける→だがなぜかガルムは消えずにすんだ→誰かのためにガルム自身が石を使うことが、魔法を解く条件だった、という流れのほうがわかりやすく、物語的にもスマートです。個人的には最後魔法使いの出演シーンは無くていいと感じました。キャラを見せたい気持ちもわかりますが、ガルムとボルノの物語の中では蛇足だと思います。

最終候補まであと一歩 賞金1万円
魔王女の騎士53P
門田もん 31歳 愛知
GOOD POINT
作家の個性を活かし王女の表情や仕草をかわいらしく描けていた。失くしていた記憶を取り戻す話の展開はスタンダードながら読みやすく、魅力のあるドラマを作れていると感じた。
NEXT STEP
かわいらしい王女と比べると、主人公の少年は役割と性格がやや魅力不足だった。また、ストーリーを通して人物の成長や進歩が欲しいところ。主人公の立ち位置や見せ場を工夫しよう。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
魔界サラリーマン根暮54P
なすお 25歳 石川
GOOD POINT
主人公が営業として成長していく様子を丁寧に描けていた。また、キャラ同士のやりとりが面白く、セリフにも遊び心が感じられた。終盤の勢いある画面構成も印象的に感じた点だ。
NEXT STEP
キャラ以外の作画も丁寧に行ってほしい。魔界と営業がテーマならば魔界の景色や社内の様子を如実に描くほど、読み手がワクワクできるはず。トーンのはみ出し等にも、気を付けよう。